らくだ文庫の訪問日記

残暑の厳しい9月のある日、私たちはモデルハウスとして2010年の竣工から5年間通い詰めた「らくだ文庫」を訪問した。

らくだ文庫

あいにく?の店休日とはいえ、お休みでもないとゆっくりお話もできないので仕方ない。あいさつもそこそこに柴田さんご主人と奥様、興味津々な新人スタッフ2名を交えて雑談が始まった。冒頭で触れたように5年前までは、当社のモデルハウスとして5年間はお借りする条件で家のようなお店「らくだ文庫」は誕生した。なぜ?ここでブックカフェを、どうしてモデルハウスに?と記憶を辿ってもらった。その様子はこんな感じ。

らくだ文庫

らくだ文庫ご主人・柴田さん(以下、柴田):仕事のために拠点を東広島に移し、購入した自宅を倉庫に2000年くらいから本や雑誌の卸をやっていまして、数年が経って、手狭になったというか、朝早くに大きなトラックが本を運んでくるので、近隣の迷惑になっているんじゃないか、と思い始めて、倉庫兼ブックカフェという漠然としたイメージを持って建ててくれるところを探していたんです。沖田さんを知ったのは、その頃でした。土地は購入してましたし、オキタホームの家なら、この土地に馴染むだろうと思いました。

オキタホーム(以下、オキタ):当社のオープンハウスへ、数回、足を運んでもらいましたよね。以前は住宅会社の会社員たったんですよね?

新人スタッフ:え(へ)ぇー!、建築から本の卸ですか?

らくだ文庫

柴田:そうですね。当然、建築にもこだわりがありますし、納得のいくハウスメーカーや工務店探しに時間がかかりました。本の卸を始めたきっかけは、その会社を辞めて、本の卸をやっている会社に務めたんです。そこで卸先の開拓に積極的に取り組んでいたら、ちょうど東広島の開発がどんどん進んでいて、新規の取引先も増えまして…当時の会社としては、思った以上に増えすぎたんで「独立しなさい」って言われたんです。(笑)

新人スタッフ:(笑いと疑問に包まれる)

オキタ:(笑)で、このプロジェクトを進めている時に、ちょうどモデルハウスの建築に補助金が出るという制度が始まって、僕としては、柴田さんのやりたいことにもう少しボリュームがあった方がいいんじゃないかと思ってて、お互いの気持ちが一致した部分があったのでそれを利用して5年間は、当社でお借りするという条件で、モデルハウスをやらせてくれてくれないかと提案して。

柴田:結果的にオキタホームのモデルハウスとして、らくだ文庫も書籍の販売だけ同時にスタートしましたけど、忙しい時期だったし、ランニング期間としては、ちょうどよかった。

オキタ:当社の建物には、興味をもっていただいていたので、お互いにいろいろ話をしながら、楽しくプランをはじめました。そこで自給自足的な話も飛び交って、畑の肥料になるようにコンポストトイレを取り入れたり、「農業」はその前から始められてました?

柴田:このあたりは、畑も、田んぼも多くて、たまたま、持ち主の方と話をしていたら、「手伝いんさい」って言われて、手伝ううちに楽しくなっちゃって(笑)自分でお米もつくってみたいなーと話をしていたら、田んぼを売ってくれる人も現れたりして。そんなことも始めて忙しかった(笑)

─── 話は、一旦、料理の話に脱線…

オキタ:5年間お借りしている間、「らくだ文庫」のオープンに向けてもいろいろと、方向性とか話しましたね。

柴田:そう、こんな感じじゃなくて、本当、まじめにね(笑)

オキタ:そうですね。柴田さんは、いろんなことに興味持たれてますから、僕も勉強になりました。

「らくだ文庫」のカフェメニューは、ブックカフェらしく本を読みながら、ゆっくり過ごせるコーヒーをはじめ、おいしいスイーツもある。でありながら、そのこだわりには、目を見張るものがある。以前は豚汁、ご飯、お漬物というシンプルなメニューでスタートした。野菜も自家製なら、米も自家製。美味くないはずがない。そしてこの度、さらにその自家製を活かすべく考え抜かれたカレーライスが新しく登場した。提供に納得いくまでには、時間がかかったそう。評判は、上々。ぜひ、お召し上がりいただきたい。書籍のラインナップは?というと古本も少々あるが、新刊がほとんど。「文庫」から文庫本のイメージで小説など俗に「読みモノ」が多いのかな、と思われがちだが、ムック本や雑誌が豊富で、生活の実用書も多い。それに加えてオーナー夫妻の読んでみたい本、勧めたい本が並ぶ。建築関連の書籍が多いのもうなずける。今は、ご主人の趣味?いえ実益から「農業」に関する本も増えている。女性誌も豊富でそんなところも、女性のカフェ利用者に喜ばれていて「こんな雑誌あるんだ」と発見してもらえることもしばしば。大きな書店の膨大な量の中で埋もれてしまっているような本に気づくことができるのも「らくだ文庫」ならではの体験だ。

話を伺うと、行き当たりばったりのようにも聞こえるが、開店にあたっては、紆余曲折、いろいろあったようだ。しかし、そこは自分たちの力で生きるという自給自足が原点にある。ニュートラルなシンプルさもいい。やったことがないことも、やってみるの精神。そして、さらに柴田さんは風景にこだわる。そこはオキタのコンセプトにも近い。残すべきところは、残さないといけない。都心が機能性を高めるために近代化していくことは否めないし、むしろそうあるべきなのでしょう。しかし、どこもかしこもそうする必要もない。今、東広島は、受け継ぐことのない畑や田んぼを更地にして、至る所で住宅の開発が進んでいる。小さく細切れに売り出された土地から街並みや景色に似つかわしくない家がたくさん建ち始め、失っていく景色に不満をこぼす住人も多い。柴田さんもまた、その寂しさを感じている一人なのだ。当社を選んでいただけたこと、またいろんな刺激をいただけることを嬉しく思います。貴重なお時間をありがとうございました。

モデルハウス利用時のイベント風景

●建築データ/施工開始年月日:2009年12月/完成年月日:2010年8月/床延面積:89.8坪/間取り:3LDK +S

らくだ文庫

〒739-0036 東広島市西条町田口1185-4
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